2015/11/18

Nanfei

Nanfeiさんは2016年12月に修士課程を終える在校生です。日本への交換留学の経験の他、東京の民間金融機関で2年間働いたことがあります。南京センターで学んだ後にDCのキャンパスに移って来ました。

上海にて

簡単に経歴を教えて下さい。

幼い頃に家族とともに中国からアメリカへ移住してきました。子供の頃から日本の漫画やアニメは好きで、小学校高学年の頃からでしょうか、もっとよく日本のことが知りたい、言葉も学びたいと思うようになりました。親は「何で先祖をたくさん殺してきた国のことを...」なんて大反対でしたけどね。ちょっと自分で勉強したりもしたんですが、その後、日本語クラスがあるという高校があったので、受験して入りました。でもあろうことか、日本語クラスが開講されませんでした。大学で宇宙物理学を学んだのですが、日本語のダブルメジャーにすることで、そこでやっとちゃんと学ぶ機会を得ました。夏休みに早稲田へ短期留学し、その後、慶應へ交換留学しました。そうした経験から、日本で働きたいと思うようになりました。そのとき、振り返って、何でこんなに日本語を勉強するのにハードルがあって、回り道をしなければならなかったのだろうと考えたときに、きっと根本的な問題は日中関係にあるんじゃないか、と思うようになりました。よし、それではそれを直すために外交官になろうと思って、Googleで検索するとSAISが出てきました。南京のキャンパスもあって、そこで中国語を磨き直せそうだったのも長所に見えました。同時に、日本のいくつかの金融機関からもオファーをもらっていて、今SAISで始めるべきか、一度働くべきか悩み、結局日本で、投資銀行のソフトウェアエンジニアとして2年間働いてからSAISに来ました。日本での2年間、学ぶことはとても多かったと思いますよ。

なぜ南京センターに?

中国のことをもっと知ろうと考えたときに、やはり中国で、中国語で学びたいと思いました。南京は日本と中国の特に負の部分を受け止めてきた街です。にも関わらず、今でもちゃんと日本人が住んでいるんです。そうした日本の人たちと関わりを持って、彼らがどんな想いで南京に暮らしているのかを知ることが出来たのも大きな収穫でした。驚いたことに、南京の人々の日本人コミュニティに対する敵意は非常に限られたものでした。他の都市に比べてもそうだったと思います。皆、現実がわかっていて、「あなたが我々を殺したんじゃないんだから、恨んでもしょうがないじゃない」というような態度を感じました。あと、おかげで、中国語も思い出しましたよ。

南京センターの印象は?

非常に小さい建物で、冷暖房が完備され、食事は安い。そんなところなので、みんなずっと一緒にいて、お互いによく知っている、そんなコミュニティが形作られていました。教授たちも一緒に住んでいて、お昼ご飯も、飲み会も一緒で、一緒に現地の飲み屋さんに行ったりもしました。南京センターで学ぶ学生の比率は中国人100人に対して留学生100人くらいが標準なのですが、国際政治環境にも左右されますね。アメリカ人が多い年もあれば、今年は20カ国近くから留学生が来たと聞いています。日本人の学生は2年に1人くらいの割合でいるでしょうか。

南京センターで学ぶためには中国語が必須ですよね。

そうです。STAMPテストというのがあります。それを受ける必要がありました。授業は英語と中国語で行われるので、その両方を知らなければなりません。非英語圏の留学生は必然的にトライリンガルでなければならないので、そういう意味でハードルは高くなってしまうかも知れませんね。ほとんどの学生が入学前に既に中国での経験がありました。ただ、必要なのは日常で使われる中国語です。専門的な語彙、例えば「イスラム原理主義」という言葉の中国語の語彙なんて誰も知らずに来ており、そういうのは授業の中で実につけてゆけば良いので。中国語を語学として教える授業はありませんが、南京センターで学んで、中国語の力はものすごくつくと思います。

南京センターとDCの中国学プログラムの違いは何でしょう。

幾つかの授業は共通だと思います。特に基本的なクラス、例えば「中国の外交」「中国とそのアジアにおける役割」といったのは両方のキャンパスで開講されています。中身は全く同じではないのですが。南京センターでは授業や読む論文など全て中国語で、中国人の学者が中国をいかに論じるかを知ることになります。DCで英語で書かれたものを読んで英語で議論するのとは大きく違いますよね。実は経済学のクラスも南京で開講されていたりするんですよ、私は取ってませんけどね。授業は経済学、歴史学、政治学、国際法学といった分野に分かれています。中国以外の地域の要素も含まないわけではなく、例えば同級生の一人は「中国とヴェトナムの法体系の比較」なんていうのに興味を持って、教授と相談しながら学んでいましたね。

南京は歴史的な経緯もあって特別な場所です。そこで日本人が学ぶ意義は?

南京センターは日本人が日中関係を学ぶのに最も安全な場所だと思いますよ。以前、南京センターにはサッカーチームがあったんです。あるとき、日本人の選手がいて、現地のチームと親善試合か何かで相手にタックルをして、詳しい状況はわかりませんが揉め事になったことがあったそうです。そこには中国人の学生の日本人に対する反感もあったんだろうと思います。南京センター側もその辺りはわかっていて、ちゃんと仲裁して、収めたと聞いています。それ以来、サッカーチームはなくなっちゃいましたけどね。確かに中国人の学生の間に日本に対する反感があるのは感じ取れます。でも、日本の国や政治に対する思いとは裏腹に、みんな日本の文化が好きだし、食べ物が好きだし、日本に行きたいとも思っています。南京センターで日本語を教えていたことがあったんです。そこに来た学生のほとんどが中国人の学生でした。みんな、日本のことを知りたいと思っているんです。そういうところで、日本人の学生が自分の意見を言えば、みんな聞きたがるし、そこには変な反発はありませんよ。確か、日系アメリカ人の教授も1人いて、日中関係について研究していました。日中関係ってやはり大きなトピックの一つなんです。

南京と北京で学ぶ違いは何なのでしょう。

歴史的な経緯を紐解くと、南京大学のもとなった国立中央大学は国民党政府の首都にあって、その後も影響力は残ったんです。なので、北京政府はそれを6つに分割して、南京大学の持つ知的な役割を弱めようとしました。そんな名残もあって、現在でも南京大学は中国で最もリベラルで独立した大学なんです。北京はもちろん首都なので、いろいろな情報へのアクセスがありますが、同時に政治的に政府からの影響を受けやすいとも言えます。上海はもっとビジネス寄りです。そういう意味で、南京の教授たちは他の場所の教授がしり込みするようなことを言ったりできるんです。特に南京センターは特別ですよ。授業で使う資料がイントラネットにアップロードされるんですが、使った後は消去されます、政府に知られたくないようなことを議論するから。南京センターは中国の中で検閲から最も遠いところだと思いますよ。南京センターでは、例えば北京大学なんかでは外国からの留学生と正面切って議論することが憚られそうな、チベットや、少数民族のこと、社会問題や貧困なんかをしっかり議論できます。中国の中で、中国語で、中国の人々とこうしたことをざっくばらんに議論できるのは南京センターならではなんじゃないでしょうか。

夢はありますか?今後のキャリアはどんな風に考えていますか?

私の夢は、やはり日本と中国の間の架け橋を、その一部分でも築くことです。私の貢献がどんな大きさになるかは置いておいて、日中関係の深化に貢献したいです。どんな形で、というのはまだわかりません。若いうちに影響力のある偉い人を動かして何かできるかというとそれも難しいかも知れません。今、考えているのはテクノロジー分野から何かできないかということです。そうしたところから、何かしらの機運を作ることが出来ないか、そんなことを考えています。未来のリーダーたちにどのように影響を与えてゆけるか、どんなプラットフォームを作るべきか、そんなことを考えています。

SAISを目指す日本人、もしくは中国に留学を考えている日本人に何か一言お願いします。

簡単に二つ。まず、ぜひ中国に来て下さい。ホプキンス南京センターに限らず、南京大学ではたくさんの日本人留学生が学んでいます。南京はとても奇麗な街です。そして、日本と中国の関係を考える格好の場所だと思います。そこの学生たちも、日本人の声を欲しています。議論の中でも、日本のことがたくさん出て来ます。教授も日本について間違ったことを喋ることがあります。それを訂正するのは皆さんなんですよ。もう一つは、SAISって、例えばこれまで日本を出たことがない人にとって、素晴らしい場所だと思います。日本の外の世界はこんなものだったのか、こんな多様だったのか、と。多様で、面白い人がたくさんいます。どこから集めて来たのかわからないけれども。この間なんか、経済の授業で価格差別について教授が話していて、その具体例で、あるホテルチェーンが生年月日を使って価格を決めるキャンペーンをやったのを話していたんです。そうすると一人がすっと手をあげて、「私、そこで働いていて、あれでかなり損を出してました」なんて言うんです。こんなことがいつも起きる学校です。いろんなところで働いていた人が来るから、いろんな声が出て、いろんな経験が語られます。もし私が日本人で、留学を考えていたら、きっとSAISみたいな学校を選ぶんだろうなぁ、と思います。で、外の世界はこうだったんだなぁ、と。SAISが全ての縮図とは言いませんが、世界の一端をSAISを通して発見するというのは価値あることだと思います。

南京センターの有志はボランティアで英語を教える。写真は彼らのハロウィーンの一枚


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