2015/12/08

Erina

Erinaさんは2016年に修士課程を終える予定の在校生です。総合商社にて資源ビジネスに従事した後、SAISへ留学しました。

クラスメイトたちと。

簡単に経歴を教えて下さい。留学のきっかけは?

イギリスで生まれた後、高校まで日本、インドネシアとシンガポールで育ちました。インドネシアにいたのは1996年から1998年で、政変に立ち会うことになりました。加えて、貧困の蔓延を間近に見てきたこともあり、自然と開発に関わる勉強、仕事がしたいと思うようになりました。大学では政治学科に入り、一般的な政治の勉強をしました。在学中にUCLAに交換留学で一年間滞在し、国際開発を初めて学ぶ機会を得ました。大学卒業後、留学するか仕事をするか迷い、社会人経験を選びました。開発に関わる仕事ということで、商社を選びました。直接途上国と関わる仕事が出来ると思ったんです。商社では非鉄金属のトレーディングと投資を主に担当しました。その間、インドのデリーに4ヶ月ほど派遣されたことがあり、ニッケルのマーケティングに携わりました。製鉄会社を訪ねたり、トレーダーに話を聞いたりしながら、需給調査を進めました。そんな時に、あるアルミニウムに関わる投資案件で、先輩と話をする機会がありました。西アフリカのギニアに関してだったのですが、埋蔵量も多いし、品質が高い国であるにもかかわらず、鉱業法が毎年変わったり、頻繁に税制の変更があります。そうすると、投資側はキャッシュフローも引けないということで、投資をあきらめたことがあったそうなんです。途上国、特に資源国の開発に携わりたかったのですが、ガバナンスに問題があったり、政治リスクがあったりする場合に投資を通じたアプローチは出来ない、そんな限界を感じたことで留学を決意しました。一旦外で勉強して、そうしたガバナンスなどの問題に直に関わってゆきたいと思っています。

これまでのところのSAISの印象を教えて下さい。

みんな頭が良いと素直に思います。Creativeな意見が多く、柔軟な考え方が出来る人たちが集まっています。それに、イベントが毎日あって、いろんな人が訪れる。国際関係や経済に少しでも関わりがあれば、何でもイベントになります。そうしたことを通して、今まで知らなかった分野を開拓できるんです。これはSAISという学校だけにとどまらず、街全体がそうした機会の宝庫ですね。日本でメディアなどを中心とした限られた情報源とは違います。そういえば、アメリカ人って英語しか話さないイメージもありますが、SAISに英語しか喋れないアメリカ人はほとんどいません。それぞれ地域のフォーカスがあったりして、いろんな言葉を喋れる人が多いんです。

UCLAでは学部生として国際開発を学びました。日本の大学は緩いところがあると感じていたのに対し、UCLAに行って、始めて自分が真剣に考えていたトピックが議論されていると感じました。ダルフールの虐殺に対して声をあげているグループがあったり、LGBTに関して声を上げるグループがあったり。ユダヤ系グループとパレスチナ関係のグループが目の前で対立しているなんてことも目の前で起きていました。そんな環境で、国際関係を身近に感じましたね。世界の縮図を見た、とでも言えるかも知れません。日本の新聞を眺めていても分からないことを、肌感覚で理解出来るんです。SAISもそうした環境だと思います。しかし学部と違い、大学院ではフォーカスを定めないと意味が無いと思います。学部の頃はより一般的な、入門的な内容でも満足出来ていました。しかし大学院を卒業したときに「私はこれをしました」と、よりフォーカスを絞って、自信を持って言えなければいけないと思います。マイクロファイナンスについてやりました、腐敗と民主主義をじっくり学びました、というような「これ」と自分を打ち出してゆけるものを見つけたい、そんなことを思いながら学んでいます。

SAISにもキャリアサービスというのがあります。日本の大学で言うと就職課ですね。彼らは、うまく使えばいろいろと教えてくれるし、Employer Sessionもあるんですが、それは入り口でしかないんです。それ以上は、常に自分次第。SAISに行けば自動的にキャリアが開ける、なんていうことはありません。現在、UNDPでインターンをしています。これは公募すらなかったのですが、自分から連絡してみると、選考してくれました。自分でどんどん動いて行かないといけませんね。そういう意味で、日本とは違います。メールして、コーヒーして、フォローアップ。使えるものは全て使って行きます。教授陣もリソースの一つです。彼らから人を紹介してもらったり。

IDEVについて教えて下さい。

同級生のバックグラウンドが様々です。今のルームメイトもIDEVなんですが、マレーシアで英語を教えたり、カンボジアで女性の社会進出を助ける仕事をしていました。他にも、米国版の青年海外協力隊でコートジボワールに派遣されていた人、PKOでタンザニアの武装解除に関わった人、投資銀行にいた人。公的セクターからから民間まで、本当に色んな人がいます。

IDEVでは開発という大枠の中でそれぞれが違うフォーカスを求めます。紛争地域におけるその後の開発、Financial Inclusion、マクロなガバナンス、Mobile Payment、教育。ものすごく幅広いんです、開発って。その開発のいろいろな側面から自分で絞って選び、それにフォーカスしてゆきます。だから、IDEVの授業のリストはとても長いんです。

2年目の冬休みはプラクティカムという、実際のプロジェクトから学ぶプログラムに参加します。International Water Management Institutionという水関連のクライアントと働きます。場所はスリランカで、水資源に関するローカル行政を扱います。Tragedy of Commonsというテーマですね。水資源ををどうやって効率的に管理してゆくのかが課題です。ステークホルダーの分析をもとにして、提言を作ります。ジェンダーというのは非常に重要な要素として認識されるので、女性や貧困層をいかに参加させてゆくのか、これもしっかり見てゆきます。スリランカというのは長く紛争が続いてきた国です。それがどうローカル行政に影響を残しているのかというのも興味深いですね。IDEVのプラクティカムの目的は途上国にいって実際の経験を積むこと。IDEVとクライアントから資金が出ています。他にもチームがあり、スリランカ、インド、ケニア、ナイジェリア、エジプトで、インドには2チームが派遣されるので合計6チームですね。4−5人で1チームなので、30人近くがプラクティカムに参加します。Literature Reviewから実践まで、全てやります。方法論を議論して、統計的な裏付けを確認し、調査のデザインを効率化する、これって実際に開発の現場で調査をするのと同じことで、それを学生のうちに経験ができるんです。

そういえば、IDEVでは夏休みの間に、途上国で無給インターンをする場合の補助が充実しています。他のプログラムでも同様の補助はある場合もあるのですが、IDEVは一番手厚いと思います。私はケニアでインターンをしていました。例えばアフリカの低所得国に日本から行くのは大変なので、こうした機会に現地に行って経験を積むのは意義のあることだと思います。

IDEVは1クラス20人ちょっとがDCのキャンパスで始め、1学期目にIntroduction to Developmentという授業を皆で一緒に取ります。けっこう負担も大きくて、そのなかでグループが結束してゆくというのもあります。それと、IDEVは必ず学期前にミクロ経済学を終えていなければなりません。Pre Termで取る人が多いと思いますが、そこでも仲良くなります。失敗するとIDEVに入れない緊張感というのも共有しながら。

そういえば、出願するときにSAISの経済重視の部分って少し不安だったんです。政治学をやっていて、マクロミクロくらいしか勉強したことがなかったからです。でも、来てみると心配するほどでもないです。Applied Econometricsなど、より高度なものをやる人もいるけれど、MAを終えるために必ず取らなければならない経済学に関しては、大丈夫です。どこまでやるかは自分で考えて選べます。私は毎学期、二つ経済、二つ非経済のバランスで科目を取っています。英語についてはそこまで問題はないのですが、ただ、書くという作業はとても大変で、非経済科目を取りすぎると過大な負担になりかねません。

卒業後のキャリアはどんな風に考えていますか?

悩んでいます。国際機関で政府を対象にしたキャパシティビルディングに取り組んでインパクトを生み出してゆくのか、一方で、そこに行く前に途上国経験を積むべきなのか。自分が何をしたいのかを考えた時に、いずれは資源に関する行政、税制などに関わってゆきたいのですが、まだ専門性が足りないと感じています。それに、もっと大きな問題、例えば腐敗、財政といった問題があれば、その一部分を改善したところで本当に現実が変わるのか、そうすると、どこにアプローチをしてゆくべきなのか…そんなことを悩んでいます。国際機関を知ってゆくとその限界も発見することになるんだろうとも思っています。でもやはりガバナンス支援でUNDPで働いてみたいなという気持ちはあります。可能であれば西アフリカ諸国のカントリーオフィスに興味があるのでフランス語もSAISで勉強中です。UNDPは当事者をまとめる能力があり、現地に根付いているという印象があります。世銀のExtractive Industryや、Resource Managementのセクターにも興味があります。

SAISを目指す方に何か一言お願いします。

私は留学して良かったと思います。最初はとても不安でした。社会人をやっている間はアカデミックな場から離れていましたから。平日と週末がある感覚から、週末こそ勉強しなければというスケジュールへの転換は大きいと思います。また、ここでは、いろんなトピックに触れることができます。経済から腐敗、Research Methodのデザイン、そうした開発の様々な課題を日常的に見たり聞いたり読んだり、議論したりします。例えば、以前はセミナーに参加しても質問が思い浮かばなかったけれど、今はどんな話題に関しても、Relevantな質問が浮かんで来るようになりました。これは日本で目にした情報、勉強からは得られないものだったと思います。学生、教授との何気ない会話の中でも、いろんな開発のトピックについての知見を深めることも出来るんです。会社を辞めて来るからには何かしら得なくては、という覚悟もあり、またこれまでのSAISでの生活で、大きなものを得て来ていると感じます。本当に来て良かったと思います。私の受験は11月に準備を始めて、1月に出願という強行スケジュールでした。皆さんは計画的に進めて下さい。でも、思い立って行動しても、何とかなります。
Dupont CircleはSAISから歩いて5分、地下鉄駅もあり、多くの人が行き交います。


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